不妊症の原因をやさしく解説

なかなか授からない時に考えたいこと

不妊症の三大要因について…と不妊と関わりのある婦人科疾患

不妊症の三大要因は、

『排卵障害』『受精ルート障害』『着床障害』と言われています。

当院は東洋医学(中医学)の理論に基づき、鍼灸・中国伝統療法を用いて不妊治療に携わって参りました。

その中で、不妊症の原因として一番多く見られたものが『排卵障害』によるものです。

『排卵障害』の他、『受精ルート障害』『着床障害』の三大原因についてお話しします。 

また、不妊の原因に関わる『婦人科疾患』についてもお話します。

排卵障害

当院の長年の不妊鍼灸治療において、不妊症の原因として一番多くみられたものが、「排卵障害」です。

排卵障害とは、卵子が育たない、育っても排卵できない、排卵が規則正しく行なわれていないという障害です。

排卵が全く起こらない無月経以外に、月経周期が乱れている生理不順も含まれます。

排卵には脳-下垂体-卵巣の内分泌系が大きく関係しています。

まず、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が分泌されます。

これが下垂体へと運ばれ、下垂体から卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体刺激ホルモン(LH)が分泌されます。

その刺激によって卵巣では、卵胞の発育・排卵・黄体の形成が起こり、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。

これらの内分泌系がうまく機能していないと、卵胞が成熟しない、排卵しないといった症状が起こります。

排卵障害を引き起こす代表的な要因

  • 急激な体重の増減や情緒の変化による脳へのストレス:視床下部の機能低下
  • 何らかの原因による下垂体分泌障害:FSHやLHの分泌がうまく機能していない
  • 卵巣機能の低下
  • 甲状腺機能異常

受精ルート障害(卵管障害)

『受精ルート障害』とは、別名『卵管障害』ともいいます。

卵管は卵子や精子、受精卵の通り道ですが、卵管は1mmから10mmほどの太さしかありません。
ちょっとした炎症などで詰まったり、子宮内膜の癒着による障害が起こりやすいのです。
ここに障害があると、

  • 排卵された卵子を卵管采がつかまえることができない
  • 受精出来ない
  • 受精しても受精卵の子宮への移動の邪魔になる

といったことが起こります。

受精ルート障害を引き起こす代表的な要因

  • 子宮内膜症
  • 骨盤内炎症

着床障害

受精出来たとしても、子宮内に着床しなければ妊娠とはなりません。
子宮の病気や形態異常、子宮内膜が普通よりも薄いまたは厚い、ホルモン異常などがあると、受精卵が子宮内に着床することが困難になります。

着床障害を引き起こす代表的な要因

  • 子宮筋腫
  • ポリープ
  • 排卵誘発剤使用
  • 加齢

不妊の原因にもなる婦人科疾患   ※リニューアル作成中

甲状腺機能異常

甲状腺機能の異常とは
甲状腺は『体のエンジン』ともいえる臓器で、体全体の代謝をコントロールしています。
甲状腺の調子が崩れると、ホルモンバランスが乱れ、排卵や月経のリズムにも影響が出てしまうことがあります。

甲状腺機能低下症(甲状腺の働きが低下する場合)
甲状腺ホルモンが足りなくなると、からだの動きがゆっくりになり代謝も落ちてしまいます。
症状としては、低体温・筋力低下などの全身症状のほか、精神症状・皮膚症状や月経異常・性欲減退・不妊・流産などの内分泌・代謝症状がみられます。現代医学では甲状腺ホルモンの補充療法などを行います。
代表的なものには「橋本病」があります。

甲状腺機能亢進症(甲状腺の働きが強すぎる場合)
甲状腺ホルモンが多すぎると体が“フルスピード”の状態になります。
排卵障害は少ないのですが、流産や妊娠中毒症などの妊娠中や分娩後の異常が多いので妊娠を希望される方は専門医と連携しながら体調を整えていくことが大切です。
症状としては、甲状腺の肥大化・眼球の突出・頻脈・発汗・のぼせ・食欲の亢進などがみられます。現代医学では甲状腺ホルモンの生合成を阻害する薬物(抗甲状腺薬)などを用いて治療します。
代表的なものには「バセドウ病」があります。

中医学的に考えると 
甲状腺機能低下症の場合は 「脾陽虚」、「脾腎陽虚」、「気血両虚」、「陽虚水氾」 などの状態であると考えられます。このような症状は、疲れやすい・腰が弱い・冷え性・おりものが少ないなどがあります。温補気血・昇陽作用を目的とした治療で気血のめぐりをよくし疲労倦怠感を改善することができます。
また、甲状腺機能亢進症の場合では「気鬱化火」、「陰虚陽亢」、「気陰両虚」などの状態であると考えられます。体が加速している状態をゆるめることが必要です。滋陰降火・滋陰養血・補心安神作用を目的とした治療で、のぼせやほてり、不眠や動悸などの症状を軽減することができます。

高プロラクチン血症

<高プロラクチン血症とは>妊娠すると、乳汁(母乳)の分泌を促し、排卵を抑える働きをもつ『プロラクチン』というホルモンが多く分泌されます。
『プロラクチン』は、本来、妊娠中~分娩後の授乳期にかけて乳腺を発達させ、母乳をつくるために分泌されるホルモンです。また、排卵を抑える働きで自然な避妊の役割も果たします。しかし妊娠していない時にもプロラクチンが過剰に分泌されることがあり、これを『高プロラクチン血症』といいます。この状態になると、月経が止まる(無月経)、排卵が起こらない(無排卵月経)、母乳が出る(乳汁分泌)などの症状が現れます。男性の場合は、性欲の低下や女性化乳房が見られることもあります。


高プロラクチン血症の主な原因>は、

・視床下部や下垂体の異常(腫瘍など)

・一部の薬の作用(ピル、胃潰瘍、抗うつ剤や降圧剤などを長期間服用した場合など)

・流産・中絶後分娩・出産後のホルモン変化

・夜間のみプロラクチンが高くなる『潜在性高プロラクチン血症』
この『潜在性高プロラクチン』は視床下部の小さな機能異常の一つで、日中は正常でも夜間にホルモンが高くなるという病態で、これにより不妊症や流産を繰り返した場合は、治療が必要になります。

一方ではっきりした原因が見つからない「原因不明」のケースも少なくありません。

プロラクチンが高いと、

  • 生理が止まりやすい
  • 排尿が起こりにくい
  • 不正出血や乳汁分泌がみられる

といった症状につながることがあります。


中医学では、高プロラクチン血症は≪陰陽バランスの乱れ≫などによるものと考えられています。当院の中国伝統療法では、脳下垂体の働きや骨盤内の血流を整えるために、関係するツボへ行います。鍼灸(はり・お灸)治療を中心に行います。さらに経絡漢方温熱や吸い玉(カッピング)療法を組み合わせ、陰陽のバランス(からだのバランス)を見ながら少しずつ体質を改善していきます。

骨盤内炎症性疾患(PID)

骨盤内炎症性疾患(PID)とは
骨盤内の蔵器(子宮・卵管・卵巣など)に炎症と感染が起こる疾患です。特に卵管に感染が広がると、炎症や癒着(ゆちゃく)が生じ、卵管が詰まってしまうことがあります。これが原因で卵子と精子が出会えず、不妊症の大きな原因となることがあります。


骨盤内炎症性疾患を引き起こす原因

最も多い原因は性感染症(STD)による細菌感染です。代表的なものには『クラミジアトラコマチス』『淋菌(りんきん)』があり、性行為によって感染します。感染はまず子宮・子宮頸部から始まり、卵管や卵巣など骨盤内へと広がっていきます。

<卵管への影響と不妊との関係>                                  骨盤内炎症性疾患により卵管がダメージを受けると次のような問題が起こることがあります。
① 炎症による卵管の閉塞(詰まる)
② 癒着による卵管采(卵子をキャッチする部分)の働きが失われる
③ 卵管の閉塞による子宮外妊娠
これらはいずれも不妊や妊娠時のトラブルの原因となるため、早期発見と早めの治療はとても大切です。

診断と治療が適切であれば完治する可能性の高い疾患ですが、治療よりも予防が大切です。予防のポイントは次の通りです。

・不特定の性交渉を避ける

・コンドームなどの避妊具を正しく使用する。

・パートナー全員が性感染症の検査・治療を受ける。

中医学では、骨盤内炎症性疾患を『気虚湿阻』・『下焦湿熱』といったからだのバランスの乱れによるものと考えます。これは、下腹部に余分な水分や炎症による滲出物がたまっている状態を指します。症状としては、下腹部の張りや痛み卵管・卵巣のむくみなどが見られます。
当院では、鍼灸と下腹部の漢方温熱療法、吸玉(カッピング)などを用い、局部の気・血のめぐりを改善し、滞っている水分や老廃物を代謝によって流れをスムーズにすることによって、体の免疫機能を高めていきます。

これにより、子宮・卵管・卵巣を活性化し元々持ち合わせている機能を高めることにより妊娠・出産を目指せるからだづくりをサポートします。

子宮内膜症

子宮内膜とは
子宮の内側には『子宮内膜』という、赤ちゃんを迎えるための
ふわっと柔らかく子宮を包む大切な膜があります。
女性ホルモンの働きで毎月厚くなり、
妊娠がなかった場合は剝がれ落ちて月経(生理)となります。
しかし、子宮内膜症とは、本来は子宮の中だけにあるはずの内膜の組織が卵巣・卵管・腸・膀胱など子宮以外の場所にできてしまう疾患です。そこで増えたり、剝がれたりを繰り返すため、出血や炎症、癒着(組織同士がくっつくこと)が起こりやすくなります。

<なぜ癒着が起こりやすいのか


子宮内膜の組織には”粘着しやすい性質”があります。そのため、子宮以外の場所で繰り返し出血すると、周囲の組織と癒着しやすくなります(くっつきやすくなる)。癒着が起こると、その部分の血液などのからだの巡り(気・血・水)が滞りやすくなり、痛みや冷え、臓器の働きの低下につながりやすくなります。

<子宮内膜症が起こりやすい場所

  • 卵巣
  • 卵管周囲
  • 子宮周囲
  • 子宮壁
  • 腸や膀胱

<子宮内膜症によくみられる症状
個人差はありますが、次のような症状が見られます。

  • 生理前に少量の出血がある。
  • 生理前1~3日前から腰・お尻・尾骨部・会陰部・肛門部・下腹部などの痛みが始まる。
  • 生理1~2日目に強い生理痛や激しい腹痛がある。
  • 経血量が多く、生理期間が長くなる。
  • 月経血の色が黒くっぽく、血の塊が混じる、どろっとしている。
  • 排便痛・排尿痛・性交痛など。

<子宮内膜症と不妊の関係


中医学では、子宮内膜症には下腹部の骨盤腔内に”瘀血(おけつ)”と呼ばれる血液の滞りが強くある状態と考えます。血流が悪くなると、下腹部に十分な栄養と酸素が届かず、

  • 子宮や卵巣の冷え
  • ホルモンバランスの乱れ
  • 卵の育ちにくさ
  • 子宮内膜は着床しにくい状態

などが起こりやすくなります。

このような理由から、子宮内膜症は妊娠時しづらさ(不妊や不育症)につながる可能性がある疾患とされています。

子宮腺筋症

<子宮腺筋症とは>
本来は子宮の内側にだけあるはずの子宮内膜様組織が、子宮の筋肉層にまで入りこんでしまい周囲筋層に炎症をきたす疾患です。月経のたびにこの組織が反応して炎症を起こすため、さまざまなつらい症状が現れやすくなります。

<子宮内膜症との違い>

子宮内膜症似ていますが、大きな違いは、できる場所です。

  • 子宮腺筋症…子宮の“筋層の中”
  • 子宮内膜症…子宮の“外側のいろんな場所”

また、同じ筋層にできる子宮筋腫と一緒に見つかることも多く、複数の疾患が重なる方もいらっしゃいます。

<どんな症状が起こりやすいのか>

子宮腺筋症の症状には、次のようなものがあります。

  • 強い月経痛(子宮内膜症より痛みが強いことも)
  • 経血量が多い(過多月経)
  • 月経の期間が長く続く
  • 子宮が腫れぼったく大きくなる感じ(子宮肥大)
  • 過多月経・月経延長からくる貧血や疲れやすさ

子宮内膜症とは違い、子宮の筋層内で病巣が大きくなることで子宮自体がふくらみやすくなり(子宮肥大)、それにより子宮内膜の面積も広くなり、それが経血量の増加につながることもあります。経血量の増加(過多月経)や月経期間の延長などにより貧血をおこす場合もあります。

<発症しやすい年代>

以前は30代後半から40代の出産経験のある女性に多いと言われていましたが、最近では20代から30代前半の方にも(出産経験の無い女性にも)増えているとされています。ライフスタイルの変化やストレス、冷えなどが影響しているとも考えられています。

<妊娠への影響>

妊娠にとって大切な子宮に子宮腺筋症があると、子宮の動き(収縮)が悪くなるため子宮内の血流が滞りやすくなることがあります。すると、受精卵が着床しにくくなることがあり、妊娠を希望される方にとっては大切なチェックポイント。したがって早期治療が大切となります。「月経痛が重くなってきた」「経血量が増えた」そんな変化を感じたときには、早めのケアがとても大切です。

東洋医学では、子宮腺筋症は「気血の巡りが滞っている状態」と考えます。

鍼灸・経絡治療としては、

  • 子宮の働きに関連のあるツボや経絡を刺激し気血循環を良好にします。
  • 下腹部が温まることにより血流促進させます。
  • 老廃物などを排出しやすくし、滞りにくい体へ体内環境を改善していきます。

子宮本来が持つリズムや巡りを整えていくことを目指します。

子宮筋腫

<子宮筋腫とは>子宮は内側から「子宮内膜」→『子宮筋層』→「子宮外膜(腹膜)」という3つの層でできています。
この真ん中の『子宮筋層』は、”平滑筋”という筋肉でできており、妊娠すると赤ちゃんを迎えるために大きくなる、とても重要な部分です。
子宮筋腫は、この平滑筋に発生する良性の腫瘍で、女性に最も多い腫瘍のひとつです。

<子宮筋腫を引き起こす原因>

はっきりとした原因はまだ分かっていませんがこの子宮筋層は、“エストロゲン”(女性ホルモン)反応して大きくなりやすいと言われています。妊娠するとだんだん大きくなり、赤ちゃんの受け入れ準備を整えます。

  • 妊娠中に大きくなることがある
  • 閉経後には小さくなることが多い

といった特徴があり、ホルモンバランスとの関係が深い疾患です。

<できる場所による違い>
子宮筋腫は、発生する場所によって次の3つに分類されます。

(1)子宮内筋腫(子宮筋層の中)
(2)粘膜下筋腫(子宮内膜のすぐ下)(子宮内膜と子宮筋層の間)
(3)漿膜下筋腫(子宮の外側に向かってできる)(子宮筋層と子宮外膜の間)
特に、粘膜下筋腫の場合、子宮腔の形に影響しやすく、受精卵の着床を妨げたり、筋腫の大きさによっては、妊娠中の胎児の成長に影響することもあると考えられています。

東洋医学では、
子宮筋腫の場合、”気”や”血”の巡りが滞っている状態で、『瘀血(おけつ)』が影響していると考えます。
ただし、“なぜ、そのようになったか“という巡りが滞る原因は人それぞれ異なり、生活のリズムやストレス、冷え、体質など改善点も異なります。
また、同じ方でも日々の状態によって変化します。当院ではその日の体調や体質の変化を丁寧に確認しながら

  • 不足している”気・血”は補います
  • 滞っている部分は流れを整えます

元々兼ね備えている人が持つ自然治癒力を最大限発揮できる環境を作ります。

子宮頸疾患

子宮はなすび、あるいは人の頭の様な形をしています。解剖学的に子宮の首の部分を「子宮頸部」、頭の部分を「子宮体部」と呼びます。癌の発生部位が前者の場合は「子宮頸癌」、後者の場合は「子宮体癌」に分けられます。子宮頸癌と子宮体癌は、子宮という同じ臓器に発生しながらも、全く異なる癌なのです。

子宮頚癌
子宮頚部に発生した悪性腫瘍であり、女性生殖器癌の中では最も頻度が高いとされています。多産婦に多く、好発年齢は40代ですが、30代では乳癌よりも子宮頚癌の方が発症率がかなり高いのが現状です。自覚症状として、不正性器出血、おりもの、腰背部痛を伴う事が挙げられます。

子宮頸管炎
経産婦の約60%に見られます。これは頸管粘膜の炎症で、単独で起こることは稀ですが、多くの場合腟炎などから上行感染で広がります。子宮頸管は、腟を介して外界と直接通じている事や、分娩や人工妊娠中絶時に頸管損傷を生じやすい事、また感染に比較的弱い子宮腟部びらんが頸管の入口に存在する事などから、腟と同様に女性性器の中で最も感染を受けやすい所です。クラミジアの感染によるものは、日本を含めた先進諸国で大流行があると言われており、慢性化すると子宮内膜症や不妊症を引き起こすこともあります。炎症によって頸管粘液に異常をきたし、精子の侵入を妨げる原因にもなります。

子宮頸管ポリープ
良性腫瘍ですので、ポリープ自体が癌化することはありませんが、必ず根元から切除するようです。妊娠を経験したあらゆる年代に起きますが、30代~50代の女性によく発生します。接触出血が起こりますが、それ以外自覚症状はほとんどありません。子宮頸部の粘膜細胞が、炎症をきっかけに増え、茎をもったできものとして頸部から子宮の出口へ飛び出した物です。痛みはなく、妊娠・出産には全く問題はありません。しかし、ポリープが精子の通過を邪魔する状態になると不妊の原因となってしまいます。