May 12

排卵誘発剤療法

排卵誘発剤療法

排卵誘発剤は排卵し難い方に適用されますが、大きく分けて2種類あります。

一つはクロミフェンという薬剤成分が含まれるもので視床下部から下垂体ホルモンの中枢に働きかけ、下垂体ホルモン分泌を促すものです。

クロミフェン療法の対象患者としては、
第一度無月経=エストロジェンは分泌する、つまり子宮内膜が排卵までに厚くなり、受精した卵がゆっくりお休み出来る様にふかふかのベッドの準備は出来ますが、無排卵月経、或いは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を患っているために妊娠が難しい方向きです。

視床下部にあるエストロジェン受容体がエストロジェンの分子構造と酷似したクロミフェンをエストロジェンと誤認して受けてしまいますが、実際にはエストロジェンではないので、視床下部は結果的にエストロジェンの分泌不足と判断し、エストロジェン分泌を促す性腺刺激ホルモン=ゴナドトロピンの分泌増加を計ろうと性腺刺激ホルモン放出ホルモンを分泌、その結果FSH、LHの分泌が卵巣内で高まるのです。

  

しかしながら、クロミフェンの長期にわたる投与は構造上の類似が原因で、エストロ
ジェンが本来果たす役目を果たさせない、という副作用もあります。  



もう一つの排卵誘発法としてhMG-hCG療法(ゴナドトロピン療法)があります。
これは直接
卵巣に働きかけて、a 卵胞の発育促進(hMG)、b 排卵促進(hCG)をさせるものです。
殆ど
の体外受精時に使われる療法で、主に第二度無月経=エストロジェン分泌が無い方、間接的に作用するクロミフェン療法で効き目が見られなかった患者に対して行われる治療法で大変強力なものです。

こちらはまず卵胞ホルモン、つまりエストロジェンが分泌される仕組みを作らなければなりません。
ここでまずhMG=human Menopausal Gonadotropin=
閉経後のヒトのゴナドトロピンが投与されます。

生理が無くなった人のゴナドトロピン?と思う方もいるかもしれません。しかし、
よく考えると納得な仕組みなのです。
なぜhMGが分泌されるのか?そもそも性腺ホルモンが
どのように分泌されているのかを考えてみましょう。


閉経する・しないに関わらず、性腺ホルモン分泌の最高中枢である視床下部では、血流に乗って視床下部の受容体で受けるはずの末端で分泌されているホルモンがやってこないと「大変!体が上手く機能しなくなってしまう!」と察知してどんどん下垂体に働きかけます。

せっつかれた下垂体は指令どおりにFSH、LHを分泌します。
しかし、卵巣に卵は無いので、エストロジェンもプロジェステロンも分泌されず仕舞いで、要らなくなったFSHとLHは尿中に排出されてしまうのです。

この尿を精製して作られたのがhMGで、生理が始まった3日〜6日目に毎日注射で投与、卵胞を刺激してエストロジェン分泌を高めて卵胞の成長を促進します。
そして卵胞が一定の大きさに達した所で今度はhCG=ヒト絨毛性ゴナドトロピンを注射して排卵させるのです。
hCGは卵が受精すると直ちに分泌し始めるホルモンで妊娠維持を目的としています。
このホルモンが血流に乗り、黄体化した卵胞に働きかけて、プロジェステロンをどんどん分泌するようになるのです。

効き目が強いため排卵率は90%以上と言われていますが、その反面、副作用もとても強いのが特徴です。
副作用の代表的なものとして多胎妊娠、卵巣過剰刺激症侯群(OHSS)、そして流産率や周産期死亡率、奇型率も低くないと言われています。
特にOHSSでは卵巣が10センチ以上に膨れる、腹水が溜まる、合併症を発症して重症化するなど深刻な症状も報告されています。  
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